「たそがれ」は、江戸時代になるまでは「たそかれ」といい、「たそかれどき」の略である。
夕暮れの人の顔の識別がつかない暗さになると誰かれとなく、「そこにいるのは誰ですか」「誰そ彼(誰ですかあなたは)」とたずねる頃合いという意味で。
この風習は広く日本で行われた。
「おはようさんです、これからですか」「お晩でございます。いまお帰りですか」
と尋ねられれば相手も答えざるを得ず、互いに誰であるかチェックすることでヨソ者を排除する意図があったとされる。
今ちょうどコロナ騒ぎで不要不急の外出がやかましく言われ、各地とも「他所の人は来ないで」と叫んでいる。
嫌な世の中だねえ。
もっと優雅な世界がいい。
誰そ彼と われをな問ひそ 九月の 露に濡れつつ 君待つわれそ
— 『万葉集』第10巻2240番
寄りてこそ それかとも見め たそかれに ほのぼの見つる 夕顔の花
— 『源氏物語』「夕顔」光源氏
関連記事