司馬遼太郎「行春を近江の人とおしみける」

大阪府
カレンダー
2024年5月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  


暦の上では春の終わり。
大地の穀物たちに実りをもたらす晩春の雨、過ぎゆく春を惜しむ季節です。

日差しも徐々に強くなり、雪や霜の心配もなくなる季節に降る「百穀春雨」といわれる天からの恵みの雨は農作業の目安となります。

春は秋と並んで過ごしやすく、自然の すがたも美しい。

また物事のはじまりの季節であり、人との出会 いや別れも多い。

春を惜しむことは、人生において束の間のもの である佳き時間や佳き交わりを惜しむ心につながる。

芭蕉には、近江でつくった句が多い。
 そのなかでも、句としてもっとも大きさを感じさせるのは、『猿蓑(さるみの)』にある一句である。

  行春を近江の人とおしみける

この句でいう近江の人は、むろん複数である。

その中に、当然、菅沼曲翠もまじっているはずで、そうあらねばならない。
 
行く春は近江の人と惜しまねば、句のむこうの景観のひろやかさや晩春の駘蕩(たいとう)たる気分があらわれ出て来ない。

湖水がしきりに蒸発して春霞がたち、湖東の野は菜の花などに彩られつつはるかにひろがり、三方の山脈(やまなみ)はすべて遠霞みにけむって視野をさまたげることがない。

芭蕉においては、春と近江の人情があう。

こまやかで物やわらかく、春の気が凝(こ)って人に化(な)ったようでさえある。

この句を味わうには「近江」を他の国名に変えてみればわかる。
句として成りたたなくなるのである。(『街道をゆく 二十四』「近江の人」より)

街道をゆく(24) 近江散歩、奈良散歩 (朝日文庫

関連記事


クラブツーリズムの北陸新幹線で行く北陸ツアー!北陸新幹線は、2024年3月に金沢~敦賀が延伸。東京からより身近になった北陸へ!グリーン車、グランクラス利用ツアーもご用意。各県の観光地やカニなどのグルメ…北陸新幹線に乗って北陸へ行こう。

≪クラブツーリズムの大人旅≫

「寄付金控除に関する証明書」発行サービスのご案内
確定申告でのお手続きが簡単になります
【e-Taxをご利用の場合】
e-Taxでダウンロードした証明書を確定申告書に添付して手続きをします。
個々のデータを入力する必要がないので簡単!
【税務署に郵送・持参する場合】
証明書データを国税庁が提供する「QRコード付き証明書等作成システム」※2で読み込み、
PDFに変換したものを印刷し、確定申告書に添付して申告します。
添付書類が1枚になり便利に!