モノクロとライカにこだわり続ける写真家・内田ユキオが味わい深い世界の魅力をじっくりと語る。
カラー写真とデジタルカメラがあふれる今、モノクロとライカにこだわり続ける写真家・内田ユキオが、黒と白だけで見る静かで味わい深い世界の魅力をじっくりと語る。
見るだけで、心があたたかくなるフォト&エッセイ。
内田氏の優しくてちょっと切ない写真の日々、堪能できます。
ライカを提げて街を歩いたとき、手にしていた地図には、目的地も目印も記されていなかった。
自分が歩いてきた道筋を残しただけの、色のない地図だった。
「子供は何人ほしいですか」と聞かれて「3人くらい」と答えるように、「本を何冊出したいですか」と聞かれたら、「3冊」と答えてきた。
まずはライカの本、次に写真の本、最後はモノクロ写真の本と考えていた。
少しずつ形は違っても、とりあえず3冊の本を出すことができたことはうれしく思う。
写真家になったばかりの頃には、自分の名前が付いた本を出すなんて夢でさえ考えにくいことだった。
たとえば自分の子供が大きくなって手をはなれ、誰かに愛されていくように、この本も僕の手をはなれたところで誰かに愛され、その人に勇気や希望を与えることができたらと思う。
ここに収められた物語は、ただ一つを除いては本当にあったことが書かれている。
ただし登場人物を入れ替え、必要な部分だけを切り取り、台詞をならし、起こった出来事をバラバラに並び替え、それぞれの物語として組み立てなおした。
人によってはそれをフィクションと考えるかもしれない。
けれども考えてみれば、その成り立ちは写真によく似ている。
写真がフィクションだと誰に断言できるだろうか。
現実の中から、こぼれ落ちていった物語を拾い上げていくとき、僕の肩にはいつもライカがあった。
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著作者について
内田 ユキオ(うちだ ユキオ、1966年 – )は日本の写真家。
新潟県両津市(現在の佐渡市)生まれ。
公務員を経て独学で写真を学びフリーに。
ライカによるモノクロのスナップから始まり、音楽や文学、映画などからの影響を強く受け、人と街の写真を撮り続けている。
市井の人々や海外の都市のスナップに定評がある。
執筆も手がけ、カメラ雑誌や新聞に寄稿を行う。
自称「最後の文系写真家」、公称「最初の筋肉写真家」