長野と新潟の県境付近に位置する秋山地方は日本でも有数の豪雪地帯です。
この地方から秋田県にかけて、中門造の民家が多く分布しています。
その中でも昭和36年に移築されたこの民家は特に珍しいもので、18世紀中頃の姿をとどめています。
移設元旧長野県下水内郡栄村上ノ原
この民家は村の一番高い場所に位置していて、恐らく持ち主は、庄屋か組頭をしていたものと思われます。
家の周囲の壁は葭簀を張りその外側を厚い茅で取巻いています。
前方に突き出た中門付の入口には便所と厩があり、運搬用の牛が飼われていました。
外観は曲屋と同じL字型の平面ですが、東北地方の日本海側から新潟にかけて見られる中門造りで、豪雪地帯特有の玄関を前面に出した形式。
この山田家の建てられていた信州秋山郷は日本でも有数の豪雪地帯で、平家の落人伝説も残る深山幽谷の地。
水盤(流し)、樋で水を引き入れ、流しっぱなしにして使っていた。(氷らないように)
牛小屋も家の中にあり、家族と同じ暖かい家の中で飼われていました。
入口を入ると、正面にナカダチと呼ぶ衝立に似た板壁があり、室内の目かくしの役割をしています。
ナカダチの下部にあるカマドでは主に雪国でかかすことのできない味噌用の大豆をゆで、食事の煮炊きはいろりで行いました。
家族の者が生活する場所は地路の切られたナカノマで、その奥には法事など特別な時にのみ使う、仏壇のあるデイと呼ばれる座敷があります。
その横は張台構えという踏み込みの高くなったつくりで、入口には筵をさげ板壁に囲まれている寝室があります。
このように寝室のみ間仕切りがあり、他は全く建具が使用されていない点も注目されます。
ニワ(土間)と寝室の入口には堀立柱が使用されていて、古く民家の柱は全て掘立柱であった頃の名残をとどめています。