45歳以上の1/4は、すでに危険な状態。
だが、まだ腎機能を取り戻し、長生きする方法は残っている
そもそも、これまでの老化研究は、ジョウジョウバエとか、線虫とか、酵母とかの生物を対象にして行われてきました。
こういった生物の中に「種を超えて保存されている老化のメカニズム」を見つけ、人間にも当てはまるような老化抑制因子を見つけようとしてきたわけです。
不老医学の第一人者が教える、たった一つの長寿の方法。
それが、今回の研究では、「リン酸カルシュウムの骨を持つ高等脊椎動物」にのみ特有な老化加速因子を見つけることができた。
これらの動物では、リンを抑制して腎臓の負担を減らすことで、老化の進行を抑えていけることが明らかになったわけです。
ショウジョウバエや線虫を研究対象としていては、こうした老化のメカニズムは絶対に発見できなかったでしょう。
私がクロトー遺伝子を発見できたのはたまたまであり、ここまで研究を進めてこられたのも多くの偶然が重なったせいなのですが、おかげでリン恒常性や慢性腎臓病というテーマとも巡り合うことができ、これまでの老化研究の流れを変える一石を投じることができたのではないかと自負しています。
もちろん、腎臓やリンを窓口とした研究はまだ端緒についたばかりです。
これからさらに研究が進めば、老化や寿命のメカニズムの解明はもっと進んでいくでしょう。
おそらく、この先、人類という種に特有の老化活性因子や老抑制因子も見つかってくるのではないでしょうか。
1日約180Lもの原尿をつくる腎臓。
腎臓は原尿を「血液に戻す分」と「尿として排出する分」とに仕分けし、体内の水分、塩分、血圧などを一定に保つ。
近年、血中のリンを多く排出できる腎臓を持つ動物ほど寿命が長いことがわかった。
中でもハム、ベーコン、プロセスチーズ、かまぼこなどの加工食品に多く含まれる無機リンは、体内で老化加速物質へと変貌し、慢性腎臓病、動脈硬化、心臓病を引き起こす。
リンを排出する力は自覚症状なしに衰え、気づいたときには手遅れに。
食事や運動の工夫で腎臓を強く保ち、寿命を延ばす方法を伝授。
著者について
自治医科大学分子病態治療研究センター抗加齢医学研究部教授。
一九八五年、東京大学医学部医学科卒業。
九一年、国立精神・神経センターでの実験中に突然変異マウスを見つけたことを発端に、余分なリンを腎臓から排出させる老化抑制遺伝子「クロトー」を発見。
脊椎動物の老化抑制遺伝子の発見は世界初の快挙となった。
九八年、米テキサス大学サウスウェスタンメディカルセンターの助教授に就任、二〇一二年に教授に。
帰国後、現職。腎臓とリンの関係から老化の仕組みを解明する研究を続けている。
や運動の工夫で腎臓を強く保ち、寿命を延ばす方法を伝授