「太陽」の部屋 ≪遍在の場・奈義の龍安寺・建築する身体≫ 「太陽」の軸は南北軸。
斜めの不気味な黒い円筒は、後ろに回り込めば入り口があって、これは上階に繋る螺旋階段であった。
人ひとりがやっと通れるほどの狭さ。
螺旋階段の柱の主軸は傾いているし、手探りでまるで「胎内潜リ」のように、黄色い段々を登ってゆく。
階段室の出口に辿り着こうとすると階段のいくつかがない。
足で探ると階段が黒く塗ってあって見えないだけなのだった。
注意を全身で払えということなのかととりあえす納得する。
上方には凸面鏡があり、自己と空間の像の変形によって遠近と上昇下降のイメージが狂わされる。そして問題の〈部屋〉に出る/入る。
前方から光が襲って来る。
この部屋は真南を向いている。
そしてシルエットになった一対の渦巻、中国伝来の「陰陽」の模様(太極図)。
よく見て、空間関係を調整して了解しようとすると、左右にやや小さいが京都の龍安寺そっくりの石庭が、実は真南を向いた円筒の部屋の中心軸を対称にして対に置かれている。
しかしなぜ龍安寺なのだろう? アラカワ/ギンズは、人工によって〈懐かしさ〉を「建築する」ことを目指している。
この部屋に「心」と名付けているのもそれによる。
前方正面の黒い円筒の向こうが螺旋階段になっており、先ほど登ってきたところだ。
天井とは対照になっている、そして、ベンチもシーソーも軸線に対してすこし偏芯している、平衡感覚がおかしくなってくる。
最初の計画案では、垂直の円筒型の建築物の中に倒立した法隆寺があって、「胎内潜り」のように、その法隆寺を潜って行くと何時しか建物の外部に出ているというものであったという。
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