長居植物園 グラウンディングツリー

大阪府

「グラウンディング」とは、大地とつながることを意味しています。


長居植物園散策中に珍しい建造物を発見、後程調べてみると「グラウンディングツリー」と言って2024年10月に設置されたものと判明。
グラウンディングツリーについて

グラウンディングツリーはツル植物をイメージ

グラウンディングツリーはツル植物をイメージさせる9本の水が通る柱と、大地とつながる2本の大柱、植物が育つ葉を模した9つの床、水を溜めておく3つのタンクで構成されています。

9本の柱のうち、3本は雨水を集めるためのラッパのような形の集水器が、2本はタンクから水を吸い上げる動力となる風車がついており、1本は各床からオーバーフローした水の通り道で、残る3本の柱は構造物を支えるための柱です。


2本の大柱の中は全て土がはいっていて、植栽した高木の苗の根が伸びるように設計されています。

9つの床のうち、下から6つ目までは登ることができます。


9つの床のうち、下から6つ目までは登ることができます。

大阪府南部および大和川流域の自然植生の要素をもった植物を選んでいます。


6つの床には日照などの条件を考慮し、大阪府南部および大和川流域の自然植生の要素をもった植物を選び、テーマを設定して植栽しています。

柱の先端についているラッパ型の集水器


柱の先端についているラッパ型の集水器は葉などが入り込まないように、小さな穴があいた蓋をしてあります。

風車は風速4~5mで上部まで水を上げられるように、検討や実験を重ねた結果の形になっています。

雨水を溜めるタンクは、2つは地中にあり、1つは集水器の少し下に設置されています。

グラウンディングツリーに植栽されている植物は、全て、長居植物園(ほんの一部だけ長居公園)の中で採取して育苗したものです。

植物園内で、大阪府南部および大和川流域の自然植生の要素をもった植物を探し、それぞれの床ごとに異なる自然植生を表現しています。

いわゆる“雑草”と呼ばれる植物が多く植栽されていて、植物園内では唯一、雑草類が主役となっています。

時がたてば、鳥や風が運んでくる種から、植栽していない種類の植物が芽を出したり、植栽した植物が環境にあわずに、なくなってしまったりすることもあるでしょう。

自然淘汰にまかせながら、最小限の手入れを行って、植物たちが育つ様子を見守っていきます。

「バイオミメティクス」とは、「生物の形や機能、行動や生産のしくみを研究して、新しい技術開発やものづくりに生かす科学技術」のことを言います。

たとえば、ヨーグルトの蓋にヨーグルトがくっついてしまわないようにするために、ハスの葉の表面にナノレベルのデコボコがあることをヒントにして作られた、というようなことです。

グラウンディングツリーは、植物のしくみを構造に生かして設計されました。

グラウンディングツリーは鉄で出来ています。時間を経ると徐々に色が変わっていきますが、竣工当初は赤っぽい色をしています。サビているのか?と思われる人もいるでしょう。

柱の素材は、樹皮が、外敵の侵入の防止、乾燥の防止、温度変化の緩和の役割を持っていることをヒントに、“コルテン鋼”という特殊な加工を施した鉄を利用しています。

“コルテン鋼”は、表面にサビを発生させることで、サビ被膜が鋼材をコーティングし、内部までの腐食を防ぐ性質のものです。最終的には黒っぽい色に落ち着いてきます。サビ化が落ち着くまでは触るとサビがつくことがありますので注意してください。

グラウンディングのその構造は高木のそれではなく、蔦(つた)植物を模しています。


グラウンディングツリーは、1本の樹木をイメージして計画されましたが、その構造は高木のそれではなく、蔦(つた)植物を模しています。
複雑な曲線によって建築を支える構造となっています。
計算されつくした曲線を描いた柱が、自然が生み出す芸術のような美しい形態となって、建築物を支えています。

葉を模した9つの床には植物が育ち、生命が息づくモニュメントとなっています。

毛細管現象により適度な湿り気を与えられるように設計されています。

葉を模した9つの床には植物が育ち、生命が息づくモニュメントとなっています。

おわん型をした床は、底面に水を溜めるようになっていて、毛細管現象を利用したしくみで、その上に敷かれた土へ水分を届けています。

毛細管現象とは、タオルを水につけると水面よりも高く水があがってくるような現象のことで、このしくみを利用して「底面潅水(または給水)プランター」として市販されているものと、原理は同じです。
人の手で水やりをしなくても、適度な湿り気を与えられるように設計されました。

それぞれの床で溜められる水は、一定量を超えると、柱を通って下層の床に届けられ、最後は土中にあるタンクに貯水されます。

タンクの水がいっぱいになれば、外部へ排出されるようになっていて、雨が降るたびに流動し、水が腐ることはありません。

維管束(いかんそく)とは、植物の根から茎を通って葉まで至る管のことです。

根から水分や土中の栄養を吸い上げ、また、葉から光合成してできた養分を、植物全体に届ける役割を果たしています。

構造を支える蔦のような柱の中に、この維管束を模したパイプが通っています。
降った雨は柱の先端につけられた集水器から柱を通って、順番に床に水を届けながら、最後は土中のタンクに集められ、風が吹けば、柱に取り付けられた風車の力で、タンクから上部の葉を模した床に水を届けます。

長居植物園へのアクセス

Osaka Metro御堂筋線「長居駅」下車。3号出口より東へ徒歩約800m
JR阪和線「長居駅」下車。東口より東へ徒歩約1,000m
近鉄南大阪線「針中野駅」下車。西へ徒歩約800m
市バス4号系統「住之江公園発~出戸ターミナル行」、「長居東」停留所下車。北へ徒歩約400m