不眠症を恐れる必要はない

ライフログ

実は、50歳以前の私は不眠症でした。
朝まで寝れず、牛乳配達のガラスの牛乳瓶がカチャカチャとぶつかり合う音を聞いて夜が白んてくると安心して寝れるというような感じでした。

40歳ぐらいになるとメディアが睡眠の事を非科学的にガンガンやるもんですから、みんなが不安になっていたわけです。
それで私は睡眠というものをよく勉強して、その結論が得られたわけです。

睡眠の目的はふたつあります。

ひとつは体の老廃物を取ること、もうひとつは頭の疲れを取ることです。
体の老廃物はだいたい4時間半横になっていると無くなります。
人間の体がなぜ睡眠が必要かというと、仕事をしたりスポーツをしたりすると、体の中の老廃物を処理する腎臓や肝臓のバランスが崩れてくるのです。
簡単に言うとこれが「疲れた」という状態なのです。

体を横にして代謝が3分の1ぐらいまで下がると、老廃物を片付ける速度が速くなります。

通常の場合は肉体労働をしてもだいたい4時間半経つと体の老廃物は無くなります。
したがって、睡眠の最低時間は4時間半ということになるわけです。

これは人によって非常に回復力の早い人もいます。

もうひとつ、頭の疲れというのはどういうものかというと、人間が目で見たものは画像として脳に蓄積されます。
それが昼間、画像のまま溜まってくるので頭が疲れてくるのです。
それを一回整理して抽象化して覚える必要があるわけです。
これが寝る時の頭の整理なのです。
これに約2時間半かかります。
そうすると、体を休めるのと頭を整理するのを別々にやるのならば4時間半と2時間半を足して7時間睡眠になります。
それを同時にやれれば4時間半でもいいのですね。
ですから、睡眠は基本的には4時間半から7時間の間が望ましいということになります。
では、それ以上寝たらどうなるかと言うと、残りの時間はやることがないので、眠りが浅くなりだめになっていくわけです。
それから睡眠は目が大切で、目が開いているうちは画像が入ってくるので頭がゆっくり休めません。
体も動かします。
ですから目をつぶって暗くしていれば、耳は聞こえていてもいいので、横になってるだけでも頭と体が休まるので睡眠時間に関係無いのですね。

 

私はそれを50歳の時から始めまして、必ず7時間から8時間は横になっています。
部屋は薄暗くして目は使わない。

 

音は耳から入れても良いというふうにしてもう20年以上、全く眠れないこともありますが全く平気ですね。
仕事もテニスも何も支障がありません。
それ以来、私は寝なければいけないという恐怖心から解放されました。

睡眠の本当の専門家もそのように言っています。
心安らかに横になっていれば、意識を失わなくても睡眠というのは実施されます。

武田邦彦 プロフィール

昭和18年(1943)6月3日、東京都生まれ。
昭和37年(1962)都立西高等学校卒業・昭和41年(1966)東京大学教養学部基礎科学科卒業。
同年(1966)旭化成工業(株)、(1986)同社ウラン濃縮研究所長、平成5年(1993)より芝浦工業大学工学部教授を経て、平成14年(2002)より名古屋大学大学院教授,平成19年より中部大学教授.平成27年より中部大学教授(特任教授)

学位
工学博士(東京大学)
主な受賞歴
日本原子力学会特賞(1990年)
日本エネルギー学会賞(技術部門・共同受賞)(1991年)
日本工学教育協会工学教育賞(倫理)(1999年)
日本工学教育協会賞(2000年)
日本工学教育協会論文・論説賞(創成科目)(2003年)