江戸時代初期の香りを残す奥ゆかしい建物 -旧河澄家、石上露子の母 奈美 の実家を石切に訪ねる。
石切駅から徒歩で大阪方面に下ること約10分、右側に旧河澄家があります。
石切は生駒に向かう坂の途中にある街で登りはかなりきついが大阪平野を一望できる場所が随所にある。
ハルカスや通天閣などが望める。
途中で見つけたかわいい子猫。
旧河澄家は生駒山西麓の東大阪市日下町に在ります。
江戸時代当時、山麓傾斜地にあるこの地域では、田畑の水利を谷川の乏しい水に依存するため、村内に多くの用水溜池が造られました。
南北朝時代の応安二年(1369年)に入滅した日下連(くさかむらじ)河澄与市大戸清正に遡り、江戸時代には代々作兵衛を名乗り、日下村の庄屋を務めた旧家です。
溜池の維持のためには、堤の修繕、用水樋の伏替え、砂留めのための植林などに注意が必要で、工事も数多く行う必要がありました。
この時、日下村を支配した領主 曽我丹波守古祐は、御入用普請(為政者側が行う普請)で多くの普請を行い、善政を引きました。
(この曽我丹波守古祐は奉行引退後に河澄家に隠居しています。)
敷地中央に江戸時代初期の様式でたてられた主屋があり、西側に奥座敷「棲鶴楼」、奥手に土蔵の配置がなされ、このうち主屋と奥座敷「棲鶴楼」及び庭園を含む敷地が平成13年11月8日に東大阪市の文化財に指定されています。
第15代当主・常之は国文学者 上田秋成 と親交があり、秋成の随筆『山霧記』にも河澄家を訪れたことが記されています。
第19代当主・雄次郎は教育に熱心で、小学校設立に私財を投じて尽力しました。
その雄次郎の孫に当たる、タカは明星派の歌人「石上露子」として活躍したとの記録があります。
露子直筆の書。
同展では、露子直筆の書や、露子が仲の良かったいとこの冬子に贈った杉材の小箱、冬子がその小箱にしまっていた鈴虫の姿が彫られた真竹製の帯留めなどを展示する。
小箱
露子が中冬子(旧姓川澄冬子)へ、1927年(昭和2年)か、その翌年頃に贈った木製の小箱。
冬子の書置きに、「杉山家の庭の木(杉の木)で作られた小箱」と書かれています。
展示会場の土蔵は5メートル×11メートル、切り妻造りの2階建てで、外側と内側に白漆喰(しっくい)が塗られており窓は6カ所。
外からの光を最小限に抑える工夫がされている。
江戸時代後期の「河澄家屋敷絵図」によると、この蔵は現在の位置になく、別の位置から動かされたものと考えられるという。
蔵の公開は今回で4回目。
奥のスペースでは、河澄家にゆかりのある人物に関する品を展示。
富田林の豪商・杉山家に嫁いだ河澄家19代当主・雄次郎の娘・ナミの娘で、1882(明治15)年に生まれた石上露子(いそのかみつゆこ、本名=杉山孝)は、与謝野晶子や山川登美子らとともに「新詩社の五才女」と称された歌人。
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初恋の人に対するかなわぬ思いを詠んだ「小板橋」を発表した後、文学界から身を引いた。
石上露子(いそのかみつゆこ、本名=杉山孝)は、1882(明治15)年、富田林の豪商・杉山家に嫁いだ河澄家19代当主・雄次郎の娘・ナミの娘。
13歳の時に母が実家に復籍し、2年後、父が再婚。
1900(明治33)年ごろに出会った青年と恋愛関係にあったが交際は制限された。
1903(明治36)年には与謝野鉄幹が主宰する新詩社に参加し、同社の雑誌「明星」に短歌を寄稿。1907(明治40)年に家督を継ぐため婿を迎え、初恋の人に対するかなわぬ思いを詠んだ「小板橋」を発表した後、作家活動を禁じられ、家庭に入り文学界から身を引いた。
3棟の建物と主庭、裏庭、「日下のかや」として東大阪市の天然記念物に指定されたカヤの木を敷地内に有します。
主庭の東隅にある常緑針葉樹の大木であるかやの木は雄雌異株であり、本樹は雌株です。
4~5月に花が咲き、秋には2~4cmの紫褐色の実がなります。
実は食用や油として利用されます。
旧河澄家の「かやの木」は幹周り約5mあり、樹齢は約500年と推定されており、昭和51年に「日下のかや」として東大阪市の天然記念物に指定されています。
母屋西側に建てられた数奇屋風書院造りの建物「棲鶴楼(せいかくろう)」は、第15代当主・常之と親交が深かった国学者で文学者の上田秋成ら、文人が集う文芸サロンになっていたといい、秋成が目の療養で滞在した際にたしなんだ煎茶の道具や、棲鶴楼から枯山水庭園を眺めながら読んだ歌を紹介する。
主庭は棲『鶴』楼に対して亀石組を組んでおり「鶴亀」としており、西側に大滝、南側には小滝、南側に蓬莱山を構成した不老不死の祝儀思想に基づく作庭です。
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