恋多き女も娘に先立たれ、この世のはかなさを思い、仏門に入ります。
その娘というのは、百人一首の「大江山 いく野のみちの とほければ まだふみもせず天の橋立」で知られる小式部内侍です。
初代住職は平安の女流歌人・和泉式部で、別名和泉式部寺とも呼ばれる寺院。
京都の繁華街・新京極にあり、真言宗泉涌寺派に属す。
寺伝によれば、関白藤原道長が、女(むすめ)の上東門院(藤原彰子(しょうし))に仕えていた和泉式部のために、法成寺東北院内の一庵を与えたのが当寺の起こりといわれている。
当所、御所の東側にあったが、その後一条小川(上京区)に再建され、さらに天正年間(1573~91)この地に移された。
和泉式部は、平安時代の代表的な女流歌人で、才色兼備で知られ、代々の勅撰集におさめられている和歌は247首に及んでいる。
この「誠心院」という名も、和泉式部の法名「誠心院専意法尼」に由来しているそうです。
和泉式部の晩年はあまり知られていません。
誠心院に伝わる『和泉式部縁起絵巻』によれば、晩年誓願寺に参籠した折に夢に現れた尼僧に告げられたとおり、南無阿弥陀仏の念仏を毎日唱え、出家してからは誠心院に籠り遂に女人往生を遂げたそうです。
和泉式部忌
3月21日
和泉式部の命日の法要
午前:本堂内で、和泉式部に因んだ謡曲「東北」「誓願寺」の奉納が行われる
午後:開山和泉式部忌、春のお彼岸法要が行われる。
山門すぐ右手の壁面には、「和泉式部縁起絵巻 (江戸時代製作、上下2巻)」の絵画パネルが製作され、展示されている。
和泉式部が女人往生を遂げるまでの様子を描いた「和泉式部縁起絵巻」です。
女人は往生できないと考えられていた当時法然上人は次のように教えられている。
法然上人が室の津(現在の兵庫県損保郡御津町)で船で近寄って来た遊女に女人往生に教えをといています。
法然上人は「旧仏教のように女性は往生できない、また不浄の身であるから往生できないと考えてはならない。
阿弥陀仏は全ての凡夫を極楽へ迎えてくだざるのであるから、念仏を称えれば善人も悪人も、男性も女性も皆平等に往生を遂げることが出来る」と女人往生の教えをとかれています。
本堂
和泉式部が仕えた中宮彰子から賜わったといわれる本尊の阿弥陀如来像、和泉式部像、藤原道長像が安置されている
【和泉式部のプロフィール】
①978年(推定?)頃に、越前の国司・大江雅致(まさむね)の子として生まれ、少女時代は冷泉天皇の皇女・昌子内親王に仕えたとされる。
②その後、和泉の国司・橘道真と結婚し和泉式部と呼ばれるようになり、この間に娘の「小式部内侍」を出産する。
③夫・道真の単身赴任の留守中に、冷泉天皇の皇子・為尊親王と恋に落ち道真から離縁される。
更に、為尊親王の死後は弟の敦道親王の愛人になるが、これも病死。
その後は一条天皇の中宮・彰子に仕える。
④36歳頃(推定)に10数歳も年上の藤原保昌(藤原氏不比等の末孫)と再婚し、保昌の丹後の国司への転任に伴い、今度は同行し宮津に移り住む。
祇園祭には山鉾「保昌山」がある。
平井保昌が、和泉式部のために紫宸殿の紅梅を手折ってくる姿を現している。
前懸と胴懸は円山応挙下絵の一品。
縁結びのお守り授与。
⑤夫の保昌が任務を終え京都に帰るも、式部は丹後に残り(離別?)そこで生涯を終えたとの説もある(没年不詳)。
参考資料:大江田誌「古代の郷土」
夫保昌の一度失った愛を貴船に参拝して取り戻すというお話。
境内の北側には、「和泉式部のお墓」が静かに佇んでいます。
高さ約4mのこの石塔は、正和2年(1313年)に改修建立されました。
和泉式部を慕い、この場所を訪れる人々は昔から現在まで絶えないそうです。
夜はライトアップされています。
和泉式部の歌碑
「霞たつ 春きにけりと この花を 見るにぞ鳥の 声も待たるる」、江戸時代、脇に「軒端(のきば)の梅」が植えられており、これは式部が生前愛したものを後世に植えたものという。
式部千願観音石像
「百親音巡拝」成満を記念して建立される。
二十五菩薩像(石像)江戸時代
和泉式部が女人往生を遂げたことに由来する二十五菩薩来迎の像。
天正年間、寺移転再興の時、山口甚介により建立されたものです。
水かけの行者神変大菩薩像(石像)
幕末の大火で消失した神変大菩薩像(木造)を再興したものです。
中興の檀越山口家一族の墓所
天正年間、秀吉の命により誠心院移転、再興を担当した山口甚介をはじめとする山口家一族の墓所です。
長唄、杵屋六左衛門の碑
知恵授け・恋授け鈴成り輪(すずなりくるま)
和泉式部の古い灯篭の竿と台座を使った、鈴なりの輪です。
魔尼車とも呼ばれ、一回回せば経典を一回読誦した功徳が得られという。
修学旅行の女学生に人気のようだ。
誠心院へのアクセス生き方歩き方
住所:京都市中京区新京極通六角下ル中筋町487
TEL:075-221-6331
阪急電車 京都線 四条河原町 徒歩約10分
地下鉄 東西線 市役所前 徒歩約8分