天人文塼 (せん)
奈良時代 岡寺
大型多尊塼 (せん)仏
飛鳥時代 当麻寺
鳳凰文塼(せん)
奈良時代 岡寺
方形三尊塼 (せん)仏
飛鳥時代 川原寺裏山遺跡
塼は中国で焼成される立方体あるいは直方体の煉瓦(れんが)で、専、甎、磚とも書く。
立方体のものは方、直方体のものは条あるいは長方の名があり、内部が中空のものを空または坑という。
黒色か灰色を呈し、空は中国では戦国時代から墓室の構築に用いられ、このような墓は室墓とよばれる。
方は床に敷くほか、秦(しん)・漢代以降は表面に文字や文様を刻んで壁面に用いたものがあり、唐代には浮彫りによる蓮華(れんげ)文や宝相華(ほっそうげ)文などの装飾が施された画像が出現する。
もっとも一般的なものは条で、前漢末から城壁・家屋・墓室の構築に用いられた。
わが国へは朝鮮から導入され、仏教建築の建立に伴い、基壇側面の化粧積みや床面に瓦(かわら)とともに利用された。
これらのなかで壁面に用いたものとしては、奈良の岡寺出土の天人文・葡萄唐草(ぶどうからくさ)文・鳳凰(ほうおう)文が著名で、同じく川原(かわら)寺出土の緑釉(りょくゆう)波文は須弥壇(しゅみだん)上に蓮池(れんち)として敷かれたと考えられて注目される。
ほかに画像として仏がある。
中国南北朝時代から三尊仏・五尊仏・千体仏などが制作されたが、わが国では奈良の川原寺・橘(たちばな)寺、三重の夏身廃寺(なつみはいじ)出土の三尊仏や五尊仏が代表的遺例で、千体仏では独尊・四尊・十二尊の形式がみられる奈良の山田寺出土のものが名高い。
とくに山田寺出土の千体仏は独尊のスタンプが押し並べられ、上に金箔(きんぱく)をはって壁面を華麗に飾ったものと推定されている。