湯浅町は、諸説ある日本における醤油発祥地の一つで、その醸造文化が2017年度には文化庁から日本遺産に認定されている。
鎌倉時代、同じ紀伊国(和歌山県)の興国寺の僧であった心地覚心(法燈国師)が、入宋時に学んだ径山寺味噌(金山寺味噌)の製法を湯浅の村民に教えている時に、仕込みを間違えて偶然出来上がったものが、今の「たまり醤油」に似た醤油の原型だとされている。
江戸時代、湯浅の醤油造りは紀州藩の庇護を受け発展し、92軒もの醤油屋があった。
しかし、第二次世界大戦後の混乱などにより、1949年には23軒にまで減少。
その後も大手との競争激化などによりさらに減ったが、今日でも角長や湯浅醤油など5軒が醤油造りを続けている。
日本が世界に誇る調味料(SOY SAUSE)のルーツは湯浅だった。
嘗味噌の中に、瓜・茄子などの野菜から塩の浸透圧によって水分が出てくる。
この水は当時の野菜の生産が6月~8月であったため、黴の発生や腐敗の元にもなり、捨てるだけであったのだが、昔ある時、その汁を利用してみると、これがなかなか美味しい。
そこで、初めからその汁を利用するつもりで造れば「新しい醤」つまり調味料が誕生すると考えたのが今様醤油の始まりだと言われている。
また、湯浅の水が醤油作りに適した水であった事も湯浅醤油発展の一因となっている。
紀勢本線 湯浅駅から北西に700m。山田川沿いの“北町通り”には昔ながらの醤油蔵が立ち並び、その中心部に老舗の醤油メーカー“角長”がある。
湯浅の地は熊野路の入口にあたり港も発達し、また良質の水にも恵まれたため、興国寺の醤油はこの地に定着し、自家用以外に商品として製造された。
16世紀中ごろには大坂などに出荷され、江戸時代には 紀州藩の特別な保護もあって、90軒を超える醸造家が現れ“湯浅醤油”の名声は不動のものとなった。
大仙掘に面する醸造場には「角長・醤油発祥地」の袖看板がでている。
また醸造場の南に並ぶ“角長醤油職人蔵”と“角長醤油資料館”には それぞれ「醤油の発祥」「湯浅醤油の起源」という説明板が掲示されている。
その後 醤油醸造の技術は、野田(千葉県)・銚子(千葉県)や小豆島(兵庫県)などに伝わり、やがて大手メーカーによる大量生産の技術が開発されると、伝統的な手作り醤油の湯浅醤油はシェアを大きく奪われて衰退し、現在は醸造家の数は非常に少なくなっている
。伝統的な製法で醸造しているのは “角長”一軒のみであるという。
上方しょうゆの発達
室町時代後期以降、近畿地方にしょうゆの産地が形成されます。
堺、湯浅、龍野などの産地は、江戸時代中期にしょうゆの量産化がすすみ、製法が進化して品質も向上します。
その後、江戸時代に上方で書かれたとされる『万金産業袋(ばんきんすぎわいぶくろ)』によると、しょうゆの原料に、炒って挽き割った小麦と、よく煮た大豆をかき混ぜ、「麹蓋」に入れて麹をつくると記されており、現在のしょうゆづくりとの共通点が見いだせます。
また、大坂を舞台にした世話浄瑠璃『曾根崎心中』の主人公徳兵衛は醤油屋の手代であったことからも、この頃の上方の町人にとって、しょうゆは身近な存在だったと想像されます。
江戸時代初期~しょうゆ、東へ
1603(慶長8)年、幕府が江戸に開かれると、経済、文化も江戸を中心に発展するようになります。
江戸初期には都市建設がすすむ中で、生活用品の多くは上方のものが使われていました。
しょうゆも例外ではなく、上方から大量のしょうゆが江戸に送られていた記録が残っています。
いわゆる「下り(くだり)醤油」です。
江戸時代中期~関東における生産の発展
江戸の町が整備されるとともに関東でさまざまな産業が興り、上方からの輸送に依存しないようになっていきます。
関東におけるしょうゆ生産の中心として発展したのが、下総国の野田と銚子でした。
しょうゆづくりに適した気候、江戸川・利根川を利用した水運、また周辺に原料となる大豆・小麦を産する平野がひらけていたことで、しょうゆの一大産地となっていきます。
いやぁ、角長の話から曽根崎心中が出てくるとは思いませんでした。
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