おほかたに さみだるるとや 思ふらむ 君恋ひわたる 今日のながめを ―――「和泉式部日記」/和泉式部
あなたはこの雨を普通と変わらない五月雨だと思っているのでしょうか。
あなたを想う私の恋の涙であるこの雨を。
愛する人に「五月雨の物寂しさを、あなたはどうやって過ごしていますか?」と自分の気持ちを伝えた男性の歌です。
雨に恋心を重ねるのは昔の日本人の常套手段ですが、連日降り続く雨の様子と、なかなか逢えない恋人への想いで心をかき乱されている切なさが同時に表現された、情熱的な歌です。
我が宿に 雨つつみせよ さみだれの ふりにしことも 語りつくさむ ―――「うけらが花」/橘千蔭
どのみち外に出られないなら、私の家にずっといらっしゃい。
梅雨の雨の降る中、もう古くなってしまった昔話も、積もる話を語り尽くそう。
鳴る神の 少し響(とよ)みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ ―――「万葉集」/作者未詳
雷が少しだけ鳴って、曇って、そして雨でも降らないかしら。
そうしたらあなたを引き留められるのに。
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