大阪住まいの今昔館8F、ここにはもうひとつ「住まい劇場 ある家族の住み替え物語」という隠された展示がある。
隠された展示というのは、住まい劇場が一時間に二回しか上演されないからである。
上演時間になると 「空堀通」、「城北バス住宅」、「古市中団地」の模型が展示ケースの下に沈みこみ、天井から住まい劇場が降りてくる。
この上下に動く模型の意外性が受けて固定ファンも多い。しかし、何しろ一時間に二回しかないので、この展示をまったく知らないまま展示場を後にするお客さんが多いのは残念である。
物語は空堀通から始まる。
ここは路地と長屋の町で、織田作之助の小説『わが町』もこの近くが舞台である。
昭和五年(一九三〇)、四軒長屋の一つにある理髪店「浪花軒」の出来事。
客と主人は、御堂筋の拡幅、地下鉄工事、大阪城天守閣の復興など、世間話で盛り上がっている。
この浪花軒の六歳の娘が、主人公の悦子である。
左手前から2軒目が立面図の表長屋で、角地に建ち隅切りがあります。
空堀の通りは煉瓦舗装が施され、往来には自家用車(トヨダA4型・昭和11年製)や人力車、大八車、自転車が往来しています。
しゃれた街頭は「すずらん灯」と呼ばれていました。
表を掃く人、水撒きの人、通行人、そして、八木歯科医院の前で駄々をこねている子どもなどがいます。
善安筋の坂の突当りは寄席の喜楽亭。冒頭に野漠が出てくる「らくだ」や高津神社が出てくる「高津の富」などが演じられました。
この建物は屋根が入母屋造りで越屋根がついた立派なものでした。
看板は変わっていますが、現在も残る「ぜにや」ふとん店。
大型映像と駆動式の模型を組み合わせた人形劇「住まいの劇場」の展示は8階の目玉の一つとなっており、八千草薫が主人公の声を担当しています。
関連記事